マスクとアレルゲンのQ&A

スギ花粉とアレルゲンについての関連文献の抜粋

1.安枝 浩* スギ花粉アレルゲン 医学の歩みより
  Vol.200NO.5 2002.2.2 より

* 国立相模原病院臨床研究センター)
( スギアレルゲンの種類 )
スギ花粉からは2種類の主要アレルゲンCry j 1とCry j 2が同定されている。ともに分子量が40,000の塩基性のタンパク質である。」
( スギアレルゲンの場所 )
Cry j 1の大部分は花粉の最表層を構成する花粉壁外層、およびその表面に付着している微粒子であるオービクル(orbicle)に存在する。 細胞質からも検出されるが、その量は少ない。 花粉表面のCry j 1は花粉細胞で作られたものではなく、葯(やく)の細胞でつくられた後に花粉に移行してきたものと考えられている。 一方、Cry j 2は花粉壁には存在せず、細胞質内のデンプン粒に局在している。 Cry j 1は弱塩基性の生理的緩衝液で花粉から短時間に効率よく抽出され、その抽出量は花粉1gあたり500μg程度である。」
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2.佐藤 紀雄 他 スギ花粉のすべて
  メディカルジャーナル社 1995.2 より

( スギアレルゲンの大きさ )
花粉より小さな粒子は、一体何なのだろうか?この本体はまだ明らかではない。 私見では、ディーゼル排出微粒子などの浮遊粉塵にオービクルなどCry j 1をもった微粒子が吸着してできた二次粒子ではないかと考えている。 ディーゼル排出微粒子といえば家庭で脱臭剤として使っている活性炭と同じ成分なので、タンパク質や微粒子などを吸着する能力がある。 現代のアレルギー性疾患の増加には、排ガス公害も関係しているようである。」
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3.菅原 文子*1 宮沢 博*2 岡部 かおり*3
  住居侵入スギ花粉エアロゾルに関する研究
  日本建築学会計画系論文集 第515号 75-81 1999年1月 より

*1 郡山女子大学 *2 杏林大学 *3 北里大学)
( スギアレルゲンの大きさ )
「花粉による室内空気あるいは室内汚染の定量には、従来から行われて来た20〜30μmの花粉粒子の計数から行う方法と、アレルゲン量の計測から行う方法の両者が考えられる。 しかしこれまで行った測定においてはこれらは一致しない。 この点については、花粉が当初は30μmの大きさを有するとしても、実際には何らかの機構により更に小さく粉砕される場合もあり、また逆に凝集して大型粒子として飛散するなど、異なった粒径の粒子として存在していると考えられる。 とくに隙間換気により室内への侵入を考える場合には、この点は大きい影響があると思われる。

粒径分布を検鏡による結果とアレルゲン定量による結果いずれも屋外では25μm以上の大粒径と5μm付近にピークのある二山形を示し、室内では大粒子が少なく5μm以下の小粒子にピークが現れる。 これは(部屋の)開口部の大小に拘わらず同じ傾向を示しており、大粒子の室内への侵入が少なく大粒子が屋外で落下して室内への侵入が少ない結果を示している。 また同一時期の二通りの方法を比較してみると屋内外とも小粒子についてはアレルゲン量が多く検出され、小粒子の検鏡が困難であることを示している。 ことに換気量の最も少ない開口部締め切り状態に於いて室内のアレルゲン量が屋外より多量である。

花粉は飛散中に小粒子化し、換気によって室内に侵入すると思われる。 また花粉の室内侵入については、換気によるもの以外に、人や物品に付着して侵入室内濃度を構成することが考えられ、換気量の小さい室内では侵入した花粉は早急に排出できず室内に止まり、微粒子濃度を高くしていると思われる。
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4.朝倉 洋治* 中川 真紀子* 今井 孝成*
  スギ花粉飛散と各種アレルギー症状への影響
  アレルギー・免疫 Vol.8,No.2,2001 より

* 昭和大学)
( スギアレルゲンと喘息 )
「次に問題は、スギ花粉の大きさである。本来、スギ花粉は30〜40μのサイズであると、鼻粘膜に留まるため、下気道に影響がなく、スギ花粉飛散時期は鼻、目の問題のみと考えられていた。 しかし、最近、喘息症状の悪化をみることもある。 その理由は、スギ花粉表面の部分に強い抗原性を持ったオービクルという成分(2μ以下の大きさ)が存在し、喘息症状を惹起(じゃっき)してくると考えられる。
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5.美濃口 健治* 安達 満* 気管支喘息におけるスギ花粉症
  アレルギー・免疫 Vol.10,No10,2003より

* 昭和大学)
( スギアレルゲンと喘息 )
スギ花粉の表面に付着している約1μmのオービクル(抗原活性は主にCryj1)が直接気道へ到達し、喘息を誘導するスギ花粉喘息の存在を報告している。」

「花粉症を含め、アレルギー性鼻炎が下気道に与える影響の機序には、以下のことが示唆されている。 鼻閉により本来の鼻の機能が障害されることによる機序、すなわち鼻呼吸から口呼吸に変わるため、吸気の清浄、温暖化、湿度の調節が障害される。」
「また、下気道へ鼻分泌物が流入し、咳や喘鳴が起こることも考えられている。」
鼻局所でのアレルギー性炎症の結果、放出された化学伝達物質が血流を介して気管支平滑筋を収縮させたり、IL-5などのサイトカインが血流を介して骨髄に作用し好酸球の産生を増加させたり、好酸球を活性化させ気道炎症の部位への好酸球浸潤が増加し、気管支炎症と気道過敏性を増悪させることが想定されている」
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6.高橋 裕一*
  スギ花粉アレルゲンの飛散動態と花粉アレルゲンの情報化の可能性
  環境技術 Vol.32 NO.3 (2003) より

* 山形県衛生研究所)
( スギアレルゲンと喘息 )
現在行われている花粉情報は、大気中の飛散花粉の数を報じるものである。 ところで、空中を飛散する花粉の数は花粉アレルゲンの量に比例しないことがあることが最近の研究からわかってきた。 花粉情報としては、花粉の数を知らせるよりは花粉アレルゲンの空中濃度を知らせるのが望ましいことは明らかである。 それでは、どのような理由で花粉の数と花粉アレルゲンの量とが相関しないのであろうか。 スギ花粉を例にその理由を考えると、1)スギ花粉に含まれるCry j 1量がスギの木ごとに一定でなく、個々のスギの木から採取した花粉に含まれるCry j 1の含有量は10μg〜1000μgと花粉により大きな違いが見られること、 2)スギ花粉飛散期の大気中にはスギ花粉以外にもCry j 1を有する浮遊粒子が存在することなどによると考えられる。 海外では、イネ科花粉やカバノキ花粉について微粒子状の花粉アレルゲンの存在が確認されている。 これらの微粒子状花粉アレルゲンは必ずしも花粉に一致して出現しないようである。 オーストラリアでは雷雨と喘息との関連が示唆されている。 イネ科花粉のホソムギ花粉抗原の一つであるLo1 p 5 抗原は雷雨の後でイネ科花粉がほとんどみられない時間帯に高濃度に検出されることがある。 それは雨水でイネ科花粉からLo1 p 5 抗原を含むデンプン粒子が遊離するためである。 このデンプン粒子サイズは1μm前後の微粒子なので、吸入すれば気管支や肺などの下気道に到達する。同様の現象はカバノキ花粉でも知られている。

「スギ花粉にはCry j 1がCry j 2より2〜4倍多く含まれていること、Cry j 2に対する良質な抗体が得られていないことから、今までは主にCry j 1についての研究がなされてきた。 最近の研究によれば、花粉が大飛散した年にはスギ花粉が原因と思われる喘息患者がみられるようである。 また、喘息患者の一部はスギ花粉シーズンにピークフロー値が低下することもわかってきた。 前記のようにイネ科花粉やカバノキ花粉では微粒子アレルゲンの正体の一部はデンプン粒子であることがわかった。 スギ花粉でデンプン粒子に存在するアレルゲンはCry j 2なので、今後はスギ花粉シーズンの大気にデンプン粒子がみられるのか、またイネ科花粉抗原ややカバノキ花粉抗原のように降雨の後にCry j 2が大気中に高濃度に検出されることがあるか調べる必要がある。



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